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祭祀財産の承継

カテゴリ: 相続

相続のご相談を受ける中で、「お墓の管理するのは誰か」について相続人間で揉めているケースがあります。今日はお墓の管理について、法律上はどのように規律されているのか解説します。

1 民法上、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、祖先の祭祀の主宰者に帰属する」とされています。

ここでの「系譜」とは、家系図などを指します。また、「祭具」とは、位牌や仏壇などが当たります。「墳墓」とは墓石や墓碑のことを指します。

そして、これら系譜、祭具、墳墓(これらを総称して「祭祀財産」といいます。「祭祀財産」の所有権は「祭祀の主宰者に帰属する」とされていますので、祭祀財産は遺産分割の対象となりません。つまり、例えば、お墓や位牌は遺産分割の対象にはならず、「祭祀の主宰者」のものとされているのです。

2 では、「祭祀の主宰者」とは誰になるのでしょうか。民法では、第1に被相続人の指定により、第2に慣習により、第3に家庭裁判所の審判によって定めるとされています。

3 このように民法上、祭祀財産は遺産に含まれず、相続による承継とは別の規律をしています。ただし、実務上は、相続人全員で争いがない場合には、遺産分割調停の中で祭祀承継者を指定して、祭祀財産を取得させることも可能とされています。

祭祀財産の承継は、少し特殊な規律がされていますので注意が必要です。お墓の管理等についても相続トラブルが生じた場合には、弁護士に相談してみることをお勧めします。

遺留分減殺請求と寄与分との関係

カテゴリ: 相続

 最近は気温が若干下がってきまして、少しずつ秋めいてきましたね。

 今日は寄与分と遺留分減殺請求との関係について書いていこうと思います。

1 遺留分を侵害する寄与分

 寄与分とは、相続人が生前の被相続人に対して特別な貢献した場合に、相続人の具体的相続分を増やす制度のことをいいます。この寄与分と遺留分減殺請求との関係について、実は民法で明文の規定はありません。

それでは、遺留分減請求権と寄与分との関係はどのように規律されるのでしょうか。

 まず、寄与分を定める際に、遺留分を侵害するような寄与分を定めてはいいのでしょうか。民法上は、寄与分の額について上限の定めがないため、他の相続人の遺留分を侵害するような寄与分の定めをすることも可能です。ただし、裁判例(東京高裁平成3年12月24日)では、寄与分を定めるにあたっては、他の相続人の遺留分を侵害する結果となるかどうかについて考慮しなければならないと指摘しており、寄与分を定めるにあたっても遺留分に対して配慮が必要であるとしています。

2 遺留分減殺請求に対する寄与分の主張

 次に、遺留分減殺請求に対する寄与分の主張はできるのでしょうか。

結論としては、することはできません。民法上、寄与分を理由に遺留分減殺請求を拒否する旨の定めはなく、遺留分減殺請求に対して寄与分を主張することに法的な根拠はないことになります。

3 寄与分に対する遺留分減殺請求権

 遺留分減殺請求は、受遺者又は受贈者に対して行われる、すなわち、遺贈や贈与に対して行われるものとされています。寄与分は、具体的な相続分を修正するものではありますが、それは遺贈や贈与ではありませんので、遺留分減殺請求の対象外ということになります。

 

公正証書遺言作成の際によく受けるご質問

カテゴリ: 相続

暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。公正証書遺言作成のご相談を受けることが多々あります。今日は、公正証書遺言を作成するにあたってよく受けるご質問を纏めてみました。

1 公正証書遺言を作成するのに何が必要ですか。

 公正証書遺言を作成するために、まず必要なことは遺言者の方の財産を洗い出すことです。例えば、不動産や預貯金のほか株式等の有価証券があれば、それに関する資料が必要となります。具体的には、不動産についていえば、登記事項証明書、固定資産税の評価証明書(又は納税通知書についている課税明細書)が必要となります。預貯金や有価証券については、預金口座に係る通帳や有価証券に係る残高報告書等(金融機関名、支店名、口座番号、預金残高)が必要となります。公証役場へ支払う報酬の算定のために、預金や有価証券の残高が分かることが必要です。

また、遺言者の方と相続人の方の戸籍謄本のほか、遺言者の方が相続人以外の方へ遺贈をすることを希望される場合には、受遺者となる方の住民票も必要となります。これらの書類は原本である必要はなく、写しがあれば大丈夫です。

加えて、遺言者の方の印鑑証明書も必要となります。これは、上記書類と異なり原本を公証役場に提出する必要があります。また、印鑑証明書の日付も遺言作成日から遡って3カ月以内のものであることが必要ですので注意が必要です。

2 公正証書遺言の作成当日、何を持っていけば良いでしょうか。

 公正証書遺言作成当日は、遺言者の方に実印で公正証書遺言に押印して頂くことになりますので遺言者の方のご実印が必要となります。また、事前に公証役場から、公証役場へ支払う公正証書遺言の作成報酬の案内がありますので、当該報酬に係る費用をご用意頂く必要があります。

 なお、公正証書遺言作成の場合、証人2名が作成の際に同席する必要がありますが、弊所で作成を依頼頂ける場合には、弊所の弁護士又は事務員が証人となります。

3 公正証書遺言作成の際に相続人が同席することはできますか。

 公正証書遺言作成の際は、遺言者の方、公証人、証人2名のみが出席し、相続人の方が作成現場に同席することはできません。もっとも、遺言者の方が高齢である場合、公証役場までお一人で向かわれることに不安があり、相続人の方が付き添われるケースも多くあります。このような場合には、公正証書遺言の作成が終わるまで、相続人の方には作成現場から離れた別室に待機して頂くこともあります。

相続土地国庫帰属制度

カテゴリ: 相続

 東京事務所で相続案件のご相談を受けていますと、「被相続人が地方に土地を所有していたが、相続が発生し望まない土地を取得することとなってしまった」というお話を伺うことがあります。相続によって望まない土地を取得した場合、一定の場合に当該土地を手放すことができる制度(「相続土地国庫帰属制度」)が2021年4月にできました。同制度は、2023年4月27日から施行される予定です。

 この制度を利用するためには、国庫帰属の承認申請を法務大臣に対して行う必要がありますが、誰でも申請することができるわけではなく、申請をすることができる人が限られています。すなわち、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した人のみが申請をすることができます。また、担保権等が設定されている土地や土壌汚染がある土地の場合、申請をすることができません。

 さらに、管理や処分をするにあたり、過分の費用や 労力を要する土地の場合、申請をしても法務大臣の承認が得られない可能性があります。例えば、崖のある土地や、権利関係に争いのある土地の場合には承認が得られないおそれがあります。

 このように、所有を望まない土地を国に帰属するためのハードルはかなり高いのですが、要件の充足が認められた場合には相続人が土地所有の負担から解放されるという点で大きな意味を有するかと思います。

相続登記申請義務

カテゴリ: 相続

不動産登記法が改正され、相続登記の申請が義務化されることになりました。今日は相続登記申請義務について解説します。

1 相続登記申請の義務化の背景

相続登記の申請は義務ではなく、申請しなくても不動産所有者が被る不利益は小さいものでした。しかし、相続登記がなされないことにより、所有者不明の土地(①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地又は②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地を指します。)が増加し、土地の管理がなされず放置されるケースが散見されるという問題が生じていました。

 そこで、このような社会問題に対応するべく、不動産登記法が改正され、相続登記の申請が義務化されることとなりました。

2 相続登記申請義務の内容

 不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられることになりました。また、正当な理由のない相続登記申請漏れは10万円以下の過料が課されることになります。もっとも、相続後、すぐには法定相続人の範囲及び法定相続分の割合の確定が難しいことが予想されます。

そこで、不動産登記法は、上記申請義務を簡易に履行することができるようにする観点から、①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなすとされています。

東京事務所でも相続に関するご相談が数多く寄せられますが、今後相続が発生した場合には、不動産の相続登記についても確りとした対応が必要となります。

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